東京地方裁判所 昭和46年(借チ)2090号 決定
〔主文〕1 申立人が相手方に対し金七〇万円を支払うことを条件として別紙目録記載の土地賃借権を東京都台東区寿二丁目一一番一号高田一男に譲渡することを許可する。
2 申立人が前項の賃借権を譲渡した場合、別紙目録記載の借地契約の期間を昭和六三年一二月三一日までと定め、賃料を右譲渡の日の翌月から一ケ月金三、〇七五円に変更する。
〔理由〕一 申立の要旨
1 申立人は相手方から別紙目録記載の土地(以下本件土地という)を同目録記載の内容で借地し、同地上に同目録記載の建物(以下本件建物という)を所有し、これを申立外高田一男に賃料一ケ月二二、〇〇〇円で賃貸している。
2 申立人は本件建物および右借地権を前記高田一男に譲渡する予定であるが、相手方は右借地権の譲渡を承諾しない。右申立人は本件建物に居住し、グライダーとプレス業を営んでおり、その資力も十分で借地権を譲渡するも相手方に不利となるおそれはない。そこで右借地権譲渡の承諾にかわる許可の裁判を求める。
二 当裁判所の判断
1 本件の資料によれば、前項1に記載の事実のほか申立人が予定している本件借地権の譲渡が相手方に不利になるおそれはないと認められるので、本件申立はこれを認容すべきである。
2 本件の資料によれば、相手方は本件借地権について昭和四三年一二月三一日の契約上の期限到来に伴い契約更新を拒絶した旨主張するが、本件借地契約の期間は、当初一〇年間と定められ、その後昭和三四年頃さらに一〇年間延長されたもので右期限の定めは借地法上疑義があるうえ、更新拒絶の要件である正当事由の存在も見出しがたいので紛争を事前に予防するため、本件借地権の譲渡がなされた場合契約期間を右契約上の期限到来の日の翌日から満二〇年と定めるのを相当とし、これによる相手方の不利益は後記財産上の給付の点で調整すべきである。
3 鑑定委員会の意見によれば、本件土地の更地価格は3.3平方米当り金六〇万円、借地権割合七五%(右意見は本件建物の残存年数を考慮して借地権割合を補正するが、当裁判所は前記のとおり借地権の存続期間を昭和六三年一二月三一日までと定めたので、右補正の必要はない)と認められるので、本件土地の借地権価格は金三六九万円となる。
本件譲渡許可の裁判により、申立人は借地権に譲渡性が付与され投下資本の回収が容易となる利益を受け、反面相手方は借地権の存続が強化される不利益を受けるのでその利害を調整するため、申立人に財産上の給付を命ずるのが相当であり、その額は前記諸事情を勘案し、鑑定委員会の意見、従前の裁判例を参考とし前記借地権価格の約一九パーセントに当る金七〇万円とするのが相当である。
4 賃料については本件土地の底地価格に年一分四厘の利回りを乗じて得られる額に公租公課を加算して算出した鑑定委員会の意見を相当とするが、本件資料によれば、右意見書作成について資料とされた公租公課の額より昭和四七年度のそれは三〇パーセント上昇していることが認められるのでこの点を修正して、一ケ月金三、〇七五円と改める。
(河村直樹)
目録
(一) 土地賃借権
1 当事者
賃貸人 相手方
賃借人 申立人
2 借地
東京都台東区寿二丁目一一番一
宅地 五五七、九一平方米のうち
二七、一〇平方米(八、二坪)
3 目的
非堅固建物所有
4 期間
契約上昭和四三年一二月三一日まで
5 賃料
昭和四三年一月以降 一ヶ月金八六一円
(二) 現存建物
東京都台東区寿二丁目一一番地一
家屋番号 同町一一番一八
木造木羽葺二階建店舗
床面積 一階 二三、一四平方米(七坪)
二階 二三、一四平方米(七坪)